絹と木と土 ②

 今回の製作にあたり意識したのは、当社の製品そのものが主役のように主張するのではなく、「和の美を感じてもらえる空間」を、建具の側から静かに仕掛けることでした。ここでいう和の美とは、単に日本的な意匠や、ものづくりを指すものではありません。空間の余白に宿る気配や、光を整えることで生まれる陰影、その移ろいを静かに味わうこと。そうした目には見えにくい価値を、空間の中に立ち上げることだと考えています。

 故に、建具自体の派手さや華美さは極力抑え、この空間や、そこに置かれるものが主役として引き立つように整える。光の入り方や余白のあり方を丁寧に読み取りながら、部材の太さ、木目の表情や色味に至るまで細やかに考慮しています。また障子や襖に用いる和紙、引手の質感や色といった細部にも目を配り、触れたときの感覚や、ふとした瞬間に感じる静けさを意識しました。目立たないけれど、確かに空間の質を支えている——そのような製品を目指しました。

 一方で、今回の現場は民家の老朽化や、積雪の影響により、建物や枠にかなり歪みが生じており、建具を美しく納めるには非常に繊細な調整が求められました。目に見えない部分での手間と工夫の積み重ねは、かつてこの土地で木と向き合ってきた人々の仕事とも、どこか重なるものがあるように思います。当社の技術と、これまで培ってきたノウハウを結集し、最終的には空間に無理なく馴染むかたちで納めることができました。建物の裏手には、今も米代川が静かに流れています。かつて丸太を運び、人の営みを支えてきたその川のそばで、いま再び木の価値を伝える場が生まれていることに、小さな手応えのようなものを感じています。近隣ではなかなか体験できない、特別な空間になっていると思います。以前から、能代の街の中心でショールーム兼アトリエを持ちたいと考えていました。

 今回は二ツ井ということで、当社にとっては実験的な試みでもありますが、今後はここで組子細工のワークショップや、和の美意識を体感できるイベントなどを開催できればと妄想しています。これからも大榮木工とshinboku、そして新たに「絹と木と土」にご注目ください。

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この記事を書いた人

株式会社大榮木工の代表の能登です。
三代目の視点で、自社の過去と未来の物語をお伝えします。
また自社製品や職人たちのこと、故郷の風景、不思議スポットの紹介がメインになります。よろしくお願いいたします。

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